ありがとうインターナショナルは、ジュネーブで開催された第25回人権理事会会期中における「子どもの権利に関する年次終日会議」に出席しました。2014年3月23日に国連で開催されたこの終日会議における今年のテーマは「子どもに身近な司法」でした。
午前の部では、「子どもとの距離の近い司法」「子どもに優しい司法」という観点から見た国際社会の基準と規範に関する話合いが行われ、午後の部では子どもが自ら権利を主張できる環境を整備するための取り組みに関する話合いが行われました。
午前の部の開会を宣言したフラビア・パンシエーリ国連人権高等副弁務官は、昨年から今年にかけて「子どもの権利条約」を記念する多くのイベントが行われたことに触れた上で、「子どもの権利に関する委員会」が、子どもが苦情を申し立てやすい司法制度の整備を要請する文書を策定中であることを発表しました。また、その他のパネルは司法へのアクセスの問題に関して子どもが直面している課題とその現状に関する発表を行いました。
午後の部では、子どもによる司法制度へのアクセスに関する取り組みについての話合いが行われ、国際開発法機構の総長を務めるアイリーン・カーン氏は、司法へのアクセスはすべての人権を護る際の礎となるものであることを指摘しました。子どもは社会的に最も脆弱な立場に置かれることが多く、それゆえ搾取の対象とされやすいため、司法へのアクセスは、とりわけ子どもにとっては大変重要な問題だということができます。子どもに優しい司法とは、子どもの視点に基づいてなされる司法制度に関する理解のことであり、教師からソーシャルワーカーまで子どもと接する機会のあるすべての人々の取り組みが必要となってきます。また弁護士や親の役割も重要です。大人と違い、子どもにとって司法とは、あまりにも広汎で明確な形をもたず、やたらと多くの人間が関りを持つものとの認識になりがちです。そのため世界各国の司法当局と協力し、公式、非公式両者の次元における地元の実情に根ざした法体系を整備することが必要になってきます。会議では、子どもでも理解できる資料の作成、司法制度の仕組みに関して子どもに助言を与える裁判所によって定められる後見人の設置、裁判官と子どもの間でのやりとりにおいて秘匿の義務と責任を課すことなどが提言されました。
ありがとうインターナショナルは修復的司法*の推進に焦点をあてた国連事務総長特別代表子どもへの暴力担当、マルタ・サントス・パイス女史の報告書を歓迎する声明書を提出しました。ありがとうインターナショナルは、民族、性別、社会経済状態、その他の差別的要素に基づいた若者の検挙に対する社会的な要請の増加及び子どもたちが直面し、常態化している司法制度上の偏見をなくすためには、速やかな修復的司法制度の整備が必要であると考えています。また予防メカニズムや和解、紛争転換スキルや非暴力に基づく代替手段を身につける教育プログラムの整備と実施も不可欠です。異なる当事者間の対話と和解のみならず、子どもへの暴力に対する取り組みや若年犯罪者の社会復帰支援を促す取り組みといった修復的な社会制度と構造の創出と推進において、学校や宗教・信仰団体の役割は不可欠です。
会議の最後にありがとうインターナショナルは、子ども・若者間の暴力、子どもへの暴力予防、対話と和解の推進に関する取り組みにおける「共に生きることを学ぶ」プログラムの活用を提言しました。
*修復的司法◆犯罪の加害者、被害者、地域社会が話し合うことで、関係者の肉体的・精神的・経済的な損失の修復を図る手法。